何でもありのバレンタイン
★2017年バレンタインSS。ノワール視点。
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今日は二月十四日。バレンタインデーだ。
女性から男性に親愛の情を込めてチョコレートを贈る日だとされているが、義理チョコに友チョコ、果てには自分チョコなんてあったりするものだから、もはや何でもありな状態だ。
何でもありなら、男から男へチョコレートを贈ることだってありだろう。
「--というわけで、リガード、俺へのチョコは?」
喫茶店のオープン席でランチを取っていたリガードを見つけたのはつい先程のこと。
リガードに向かい合うようにして席に着くなり、独自の理論を述べてリガードにチョコをねだった。
「丁度良かった。実はノワールにも作ってきたんだよ」
「あるわけないだろ」と言われるかと思っていたので、正直予想外の展開だった。
リガードは椅子の上に置かれていたショップ袋の中から一つの袋を取り出す。
リボンの巻かれている赤い袋だ。それをリガードから手渡された。
「中、開けていいか?」
「どうぞ」
赤い袋からリボンを解いて中身を見ると、チョコブラウニーが何本か入っていた。
それを一つ摘まんで口の中に放り込む。柔らかい触感と程よい甘さが口の中に広がった。
「お、美味い」
素直に感想を述べると、リガードは「良かった」と嬉しそうに笑う。
「これは本命チョコか?」
ニヤニヤと笑う俺にリガードは、はぁと大きなため息をついて呆れたような表情を見せた。
「そんなわけないだろ。義理チョコだよ、義理チョコ。今日たまたま非番だったから作っただけ。
お世話になっている人、皆に配っているんだよ」
「なーんだ。残念」
「何というか相変わらずだな、ノワールは」
おどける俺にリガードは呆れ半分、微笑み半分といった表情を見せる。
リガードのこの表情が好きなので、ついからかいたくなるのだ。
そんな俺の心情など知らないリガードは、苦笑を浮かべながらコーヒーを飲む。
ソーサーにカップを置いたその時、苦笑が悪戯な笑みへと変わる。
「ホワイトデーのお返しは三倍返し、な?」
おおっと、そうきたか。
そもそもチョコが欲しいとねだったのは自分の方だから、ノーとは言えない。
不本意ながら、リガードにしてやられてしまったと認めざるを得ない。
「三倍返しね。ホワイトデー、期待してろよ」
「おう。待ってるからな!」
リガードが満面の笑みで「やったね」と手を叩く。
こうなったらせいぜい豪華なお返しをさせてもらおうではないか。
さて、何を贈ろうか。
まだバレンタインデーも終わらない最中に、俺は来るホワイトデーへと思いを馳せた。
UP:2017/02/09