【Vol.1:ユリアとボー】
とある村にユリアという名前の女の子がいました。
ユリアはとても素直で感情豊かな女の子でした。
お父さんとお母さん、そして村の人とも仲良しでした。
ユリアには不思議な力がありました。
その力のおかげでユリアの体は夜の闇の中でも、ランプの明かりのように光るのです。
だから、ユリアには明かりを灯すランプは必要ありません。
どんな真っ暗なところでも平気でした。
ある日のことです。
村に誰かがやってきました。
誰かが言いました。
「今からこの村を飲み込んでやる!」
すると誰かの後ろから黒い影が九本、蛇のように伸びて、村を、皆を飲み込んでしまいました。
ユリアは村の人達が助けてくれたので飲み込まれずに済みました。
「振り返らず、まっすぐ走りなさい!」
村の誰かが言いました。
ユリアは森の中を走って、走って、町はずれの教会にたどり着きました。
「森の中の教会へは入ってはいけないよ」という誰かの言葉を思い出しました。
するとどこからか「おいで、おいで」という声が聞こえてきました。
でもユリアは外にいるのが怖かったので中に入ってしまいました。
ユリアは恐る恐る声のする方へと歩いていきました。
「こんにちは、小さなお嬢さん」
地下へと降りたユリアに大きくて真っ暗な鳥が声をかけてきました。
「僕はボーっていうんだ。君は誰? どうしてここに来たの?」
ユリアはボーにお父さんとお母さん、村の皆が真っ黒な、蛇みたいな影に飲み込まれたことを話しました。
「ユリア、僕を繋いでいる鎖を解いて僕に触れてごらん。そしたら皆を助けられるよ」
ボーが言いました。
皆を助けられる! ユリアは急いで鎖を解いてボーに触れました。
すると、何ということでしょう! ボーがあっという間にユリアの胸に入っていきました。
ガシャン!
何かが割れる音がしました。
ユリアは後ろを見ました。
ユリアから伸びていた影に大きな目玉とくちばし、そして羽があったのです!
「大変だ!大変だ!ユリアの大切な心を僕が壊しちゃった!ユリアは笑ったり泣いたり出来なくなっちゃった!」
影の中のボーが言いました。
「僕も小さくなっちゃった! これじゃあ、皆を助けてあげられないよ!」
ボーはとても慌てています。
ユリアとボーは考えました。
そしてボーが言いました。
「二人で冒険しよう! そしたらきっと何もかもが元通り!皆も助けてあげられるよ!」
ユリアはただ黙ってうなづきました。
こうしてユリアとボーの冒険が始まったのです。
UP:2016/07/07