【Vol.2:ユリアとボー、怖れる】
ユリアとボーは、ユリアの住んでいた村には戻らず、森の中を更に進んでいきました。
そうして隣町につきました。
町ではユリアの村が大きな影に飲み込まれたことで大騒ぎ。
大人たちが難しい顔で新聞を読んでいました。
ユリアがぼんやり立っていると、杖を突いたおばあさんに声をかけられました。
「影の魔物と契約してしまったかわいそうなお嬢さん。心が壊れてすっかりお人形みたいな顔になってしまったのね」
そう言うとそのまま去っていきました。
ユリアはぼんやりとおばあさんに言われていたことを考えていました。
「ユリア、気にすることないさ! すぐに元通りさ!」
ボーが無邪気に笑います。でも、ユリアは不思議と笑えませんでした。
そして泣いたり、怒ったりも出来なかったのです。
日が暮れて町の人達が皆、家に帰っていきました。
ユリアとボーは旅の途中。帰る場所がありません。
「ユリア! 僕の力で星空を見に行こうよ!」
ボーが楽しそうに言いました。
「どうやって?」とユリアがボーに聞きました。
「簡単なことさ! 見ててごらん!」
すると、どうでしょう! ユリアの背に真っ黒な羽が生えたのです。
ボーの不思議な力で、ユリアは空を飛びました。
星空がとても綺麗です。ボーは楽しくて笑っているけれど、ユリアは笑っていません。
ただぼんやりと空を見ていました。
「魔物だ! 魔物が空を飛んでいる!」
ユリアとボーが飛んでいるのを見て、人々が叫びました。
そうして、皆が一斉にユリアとボーに矢を放ちました。
矢が羽にたくさん当たって、ユリアとボーは空から落ちました。
森の木がクッションになって二人は助かりました。
「怖かった、怖かったね、ユリア」
ボーが泣きそうな声でユリアに話しかけます。
ユリアは自分の手が震えて、胸がぞわぞわとするのを感じました。
「怖かったね、ボー」
ユリアは眉を寄せて体を抱き寄せました。
ユリアは「怖れる」ということを思い出しました。
UP:2016/09/05