【Vol.12:ユリアとボーと手がかり】

翌朝、ユリアとクルトが宿屋の食堂で朝食を食べていると、こちらの様子をうかがいながらコソコソと話す若い男女がいました。
ユリアは不思議に思って若い男女を見ていると、男が席を立ち、こちらにやって来ました。
「なぁ、あんた。俺はあんたに似た奴を見たんだが……」
クルトに向かって男は話しかけました。
男は酷くおびえた様子でクルトを見ていました。
ごくりと息を飲んで男は言葉を続けました。
「そいつは頭が九本ある蛇の影を連れていたんだ。あれはあんただったのか?」
クルトはハッとした顔で男を見返しました。
「いえ、僕ではありません。その人物をどちらで見かけましたか?」
クルトの否定の言葉にホッとしたのか、男は安心したような顔で答えました。
「ここから北へ向かった先にある町だよ」
「そうですか……。ありがとうございます」
男が席に戻ると、クルトはユリアに向かって言いました。
「次の目的地は北の町でもいいかな?」
クルトの真剣な眼差しを見つめ、ユリアは「うん」と答えました。
小さな声でボーも「いいよ」と答えました。
九匹の蛇の影を連れた人物はきっとクルトの弟、ラーシュに違いない。
飲み込んだ村の人達を返してもらえるかもしれない。
ユリアはそう思いました。

ユリアとクルトは朝食を食べ終え、身支度を整えると、北の町へ向かう馬車の停留所へと足を運びました。
北の町へ向かう客はユリアとクルトだけでした。
ガタンゴトンと揺れる馬車から外を見ているうちに、ユリアは眠ってしまいました。

UP:2020/09/02

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