【Vol.3:ユリアとボー、驚く】

ユリアとボーは森の木に寄りかかって星空を見ていました。
「あの星は何という名前かな?」
「今夜の月はどうして欠けているのかな?」
ボーが嬉しそうに尋ねてきますが、ユリアには一つもわかりませんでした。

「ボー、眠い」
ユリアはボーに言いました。
「わかったよ、ユリア。僕が起きていてあげる! それなら安全だ! 何かあったら起こしてあげる!」
ボーの言葉にユリアはうなづいて、そのまま眠りにつきました。

ボーは一人で起きて、星の数を数えていました。
すると、ガサリ、と森のしげみが音を立てて動きました。
ボーはじっとしげみの奥を見ました。
大きな目玉が二つ。大きな牙がたくさん、そこにありました。

「その子をよこせ」
のそり、のそりと影の魔物が近づいてきます。
「大変だ!ユリア!起きて!早く逃げないと食べられちゃうよ!」
ユリアはボーの呼びかけにぱちりと目を覚ましました。
ユリアの胸がドキドキと速まりました。

「さあ、飛ぶよ!」
ボーが羽を生やしてユリアを空へと導きました。
影の魔物からどんどん離れて、やがて見えなくなりました。

「怖い、怖いよ、ボー」
「ごめんね、ユリア。もう降りるよ!」
そう言って、ボーは地上へと降りていきました。

今度は綺麗な泉のある森に着きました。
ユリアの胸はまだドキドキしています。
「驚いたね、驚いたね、ユリア」
ユリアは自分の胸に手を当てました。
「驚いたね、ボー」
ユリアは「驚く」ということを思い出しました。

UP:2016/10/10

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