【Vol.6:ユリアとボーと花】

ボーが目を覚ますと、賢者がキッチンで食事を作っていました。
「おはよう、賢者さん!」
ボーが声をかけると、賢者は「おはよう、ボー」と微笑み返してくれました。

ユリアがゆっくり目を開けて、むくりと起き上がりました。
「ユリア、おはよう! 体の具合はどう?」
ボーは、すかさずユリアに聞きました。
「ボー、おはよう。寒いのも痛いのもなくなったよ」
ボーは良かった、良かったと飛び回りました。

「ユリア、この賢者さんがユリアを助けてくれたんだよ!」
ボーがユリアの側に来て言いました。
「初めまして、ユリア。僕はクルト。朝食は食べれそうかな?」
ユリアが頭を縦に振ってうなづきました。

ユリアとクルトが朝食を食べている時、ボーはユリアとの冒険について話し始めました。
ユリアの村の皆が黒い影に飲まれたこと、ユリアとボーとの出会い。
これまであったことを全て賢者クルトに話しました。

ボーが話し終えたその時、扉を叩く音が聞こえました。
賢者クルトが扉を開けると、うさぎとりすと鹿がそれぞれ一本ずつ綺麗な花を持って立っていました。
「小さなお嬢さん。お見舞いに花を持ってきたよ」
ユリアはうさぎとりすと鹿から花をもらい、「ありがとう」と言いました。
でも上手く笑えず、無表情になってしまいました。

うさぎが「ユリア、お花が好きじゃないのかな?」と不安げに聞きました。
「ユリアは影の魔物であるボーと契約して心を壊してしまったんだ。表情に出ないだけでちゃんと喜んでくれているよ」
賢者クルトは言いました。
「ユリアの心も治るように、お祈りしているね」
そう言い残して、うさぎとりすと鹿は森へと帰っていきました。

UP:2018/05/01

前ページ   目次へ   Vol.7:ユリアとボーと賢者の罪

inserted by FC2 system