【Vol.9:ユリアとボー、嫌う】

ユリアとボーとクルト、そしてケルベロスは森の中を歩き、遂に町へとたどり着きました。
海の見える大きな港町です。
「ボーとケルベロスは隠れていてね。皆ビックリしてしまうから」
「わかったぞ、クルト!」
ボーはユリアの影に、ケルベロスはクルトの影に隠れました。

ユリアとクルトは人であふれる商店街を二人で歩きました。
店にはお肉やお魚、野菜などの食べ物に剣や盾などの武器、綺麗な宝石や織物などたくさんの物が売られていました。

ユリアの隣を歩いていたクルトが洋服屋の前で立ち止まりました。
「ユリア。このお店にローブが売っているよ。さぁ、入ろう」
洋服屋には大きい物から小さい物、色とりどりのローブが置いてありました。
「ユリアのサイズに合いそうなのはこれかな。何色がいいかな?」
クルトはユリアに紺色、赤色、緑色のローブを見せました。
ユリアは迷った後、「これがいい」と紺色のローブを掴みました。
「それじゃあ、お会計を済ませてくるから外で待っていてね」
クルトは店の奥へと入っていきました。

ユリアが一人で店の外にいると、二人の少年がユリアに近付いてきました。
「見かけない奴だな。お前、名前は?」
「……ユリア」
ユリアは無表情で答えました。
「無愛想な奴。お前、生意気だな」
少年がユリアの三つ編みを思いっ切り引っ張りました。
「痛い……」
髪を引っ張られて痛いのに不思議と涙は出ませんでした。
「おい、お前! ユリアをいじめるな!」
ボーが怒って影から飛び出すと、少年達は驚いて尻もちをつきました。
「影の魔物だ! 逃げろ!」
そう言って少年達は走っていなくなりました。

「ユリア、大丈夫?」
ボーの問いかけにユリアは「大丈夫」とうなづきました。
ユリアは胸がもやもやするのを感じました。
ユリアは「嫌う」ということを思い出しました。

UP:2020/08/31

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